ジャパンサステナブルファッションアライアンスは、消費者庁、経済産業省、環境省に向けて、ファッション分野における政策提言書を提出しました。内容は下記ファッション産業におけるサステナビリティ推進に向けた政策提言1. はじめにいま、ファッション産業は大きな転換点を迎えている。ほぼすべての生活者が日々衣服を身に纏う様に、ファッションはエッセンシャルな産業である一方、気候変動や生態系を含む地球環境、社会に対して大きな負荷をかけている。すでに各企業においてサステナビリティに関する取り組みが進められているものの、産業全体の課題解決に至る道筋は見えていない。そこで個社での解決が難しい社会課題に対し、共同で解決策を導き出していくために、企業間の垣根を超えた組織として「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(以下、JSFA)」が2021年8月に設立された。JSFAは2050年に「ファッションロス(※1)・ゼロ」と「カーボンニュートラル」を目指しており、その為には企業、生活者、国、地方公共団体の連携が不可欠だと考える。これまでのJSFAでの活動を踏まえ、以下にファッション産業における課題解決、そして持続可能な産業へと移行するための政策を提言する。※1…原材料から最終処分までの全過程における単純焼却および埋め立処分(JSFA定義)2. ファッション産業における課題と推進すべき5項目ファッション産業の市場規模は過去25年間で3分の2に縮小している一方で、商品供給量は2倍に増えた。ファストファッションの台頭や企業努力によって衣服の価格が低下しているだけでなく、セール販売の常態化も問題となっている。企業の多くは値引き販売を前提としながら、売上確保のための大量生産が商慣習と化しており、結果として在庫の大量廃棄に繋がっている。また、国内における衣服の廃棄は97%が家庭から手放されたものであるとの報告もあり(※2)、生活者による購買後の衣服の処分方法も産業全体の課題である。現状、リユース・リサイクルのための衣服回収の仕組みが整っていないこと、再生資源が高価となり経済的に循環できていないことが理由として挙げられる。 衣服の回収と再資源化の国内循環利用システムを確立することは、環境問題解決に向けた一手であると共に、国内繊維製造業の活性化と世界に先駆けたイノベーションの創造にも寄与するものと考えられる。また、川上(原料調達)から川下(小売り)まで分業から成り立ってきた長く複雑なサプライチェーンも、透明性の確保と前述の課題解決が後手となってきた大きな理由の一つである。各製造工程における環境負荷、とりわけCO₂排出量の把握は難しく、カーボンニュートラルの実現に対しても大きな障壁となっている。現在、スコープ3を含めたCO₂排出量の把握については、総務省が開示している産業連関表を用いることが一つの手段であるものの、前述の産業特有のサプライチェーン構造や素材の特性等は反映されておらず、実態を伴わない手法となっている。国を挙げての目標であるカーボンニュートラルに対して、ファッション産業各社は、各々手探りでCO₂排出量の把握、削減戦略を練り始めたというのが現状である。近年のサステナビリティへの関心の高まりは、日本のファッション産業全体が変わる機会でもある。様々な取り組みが透明性を保ち、生活者から共感を得られるような、サステナブルなファッション産業への移行を実現するために、企業、生活者、国、地方公共団体の連携による次の5項目を提言する。 (1)適量生産・適量供給と適正価格販売の実現(2)適切なリユース・リペアの推進(3)衣服回収のシステム構築とリサイクル技術の高度化(4)サプライチェーンの透明性の確保と環境負荷の把握(5)生活者コミュニケーションの充実と行動変容の促進※2…2021年3月環境省「ファッションと環境に関する調査業務」より